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僕の法政大学史54 2012年12

昼休みが始まり、僕はまず屋上へと向かった。



ここでの僕の目的は、「法大当局に告ぐ 学生をなめるな」という垂れ幕を垂らすことだった。垂れ幕では、法大に対して、怒りを感じている学生が文連・全学連だけではないことを視覚的に示すことと、当局が敷いている弾圧の秩序を少しでも乱すことをねらった。「ノンセクトらしく戦おう」という方針から作成された特大の垂れ幕だった。



予定では垂れ幕は始まりに過ぎず、すぐに終らせる予定だった。しかし屋上に着き、問題が生じた。
ある程度予想はしていたことではあったが、屋上にも監視業務を行う教職員が数名待機していた。法政大学は、学生が少しでも集会・デモを見ないように各階に教職員を配置する。教職員の監視を掻い潜って、横断幕を垂らすことは非常に困難なことに思えた。


ここで何もせずにじっと過ごしているわけにはいかない。垂れ幕は諦めるべきか、迷いが生じた。時間は少しずつ確実に過ぎていた。


しかし、しばらくして教職員の一人が持ち場を離れ、監視の陣形が崩れた。
僕にとっては奇跡のような瞬間だったが、金で支配している人間の意志なんてこの程度のものなのかもしれない。
僕は震える手を落ち着けて、屋上から垂れ幕を垂らした。


DSC_0021.jpg






僕は階段を猛ダッシュで下り、キャンパス中央へと向かった。
周囲の学生の数はいつも以上に多いように見えるが、まだ防波堤が決壊しそうな雰囲気はない。僕は法政大学が敷いているコーンと教職員の壁を突破した。突破時に教職員が何か言ったような気がしたが、もはやそんなことには構っていられなかった。
そして、僕は封鎖され、誰もいない正門前広場に立った。


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「菅谷君、キャンパスで花火を上げようよ」
デモよりも前、10.19で何をするか相談しているときに、増井君が言った。
「いいけれど、何で」
僕は増井君に聞いた。
「ノンセクトらしいじゃないか」
増井君は笑いながら言った。

確かにそれが僕たちっぽいような気がした。

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僕はリュックに潜めていた花火を取り出した。
特大の打ち上げ花火だ。僕はチャッカマンで火をつけようとした。しかし手の震えが、花火をつけるまでの時間を長引かせた。
職員が僕に迫ってきているのがわかった。火をつけるまで時間はわずかだ。僕は心を出来る限り落ち着かせて着火を急いだ。
しかし間に合わなかった。職員に囲まれて、花火を奪われてしまった。
僕は、花火をキャンパスに打ち上げることは出来なかった。



「菅谷、何やっているんだ」
職員が僕を睨んだ。
「あなたたちこそ何をやっているんですか」
僕は震える声で言った。


僕は恐らく初めて職員に対して敵対心をむき出しにして、にらみ合った。
以前僕は「職員さんも人間だから本当はおかしいと思っているはずだ」と言っていたが、この場においてはそんなことを言っていられない。今僕が対面している人間は、憎むべきシステムそのものだった。






教職員とにらみ合っている際に遠くで処分を狙われている文化連盟の武田君が職員に囲まれているのが見えた。
助けなければと武田君の近くへと走り、職員に詰め寄った。もはや躊躇は全くなかった。



すぐそばに防波堤となっているコーンが見えた。
コーンの向こうには僕たちを見る多くの人垣。僕たちを見る視線は、様々だった。嘲笑したり、興奮したり、心配したり、嫌悪だったり、多くの視線があった。ただ、このコーンと教職員の壁が僕たちと視線を分断しているのは明らかだった。


僕は防波堤のコーンを取って、職員に投げつけた。


壁を破壊したかった。
キャンパスを支配する教職員、防波堤、監視カメラ、この全てを取り除きたかった。ずっとずっと、大学にこんなものはいらなかった。僕たちが作ったのではない、何者かが勝手に恣意的に作った憎むべき壁だった。

何かが起きることを、何かが変化することを願って、僕はコーンを投げ続けた。




「菅谷、もうやめろ!」
知り合いの教員の声。彼は僕を押さえ込んだ。僕よりも強い力だった。
必死に撥ね退けようとするものの、がっしりと僕を押さえ込んだ力を抜けることはできなかった。僕は身動きを取れなくなった。


「離して下さい、今しかないんです。今僕がやらないと! お願いだから離してください」
僕は叫んだ。
「わかったからもうやめろ!」


僕は必死の力を込めて掻い潜ろうとした。
しかし、僕よりも強い力がそれを許さなかった。


「離してください」
「お願いです」
「頼むから」
「離せ!」
「離せ!!!」


悔しかった、悔しくて涙が出てきた。
どんなに抵抗しても、どんなに叫んでも、振り切ることのできない力が僕を離さなかった。



力が足りない。
これまでも何度か感じたことのある絶望だった。

何をしても、どんなに頑張っても、何一つ変えることができない。人を出来るだけ集めて抗議文を出しても、集会をしても、デモをしても、逮捕されるかもしれない行動に出ても、何も変えられない。
圧倒的な力に対する大きな絶望。僕は身動きすらとることができずに「離せ」「離せ」と声を荒げるだけで自分よりも強い力の決定に全てを支配されるしかなかった。






「菅谷、がんばれ!」
齋藤君の声だった。斉藤君の門前での演説の声が届いた。
斉藤君は学生の決起を拡声器で呼び続けていた。斉藤君は、この大学で変わることなくずっと最前線で一番過激なところで、戦い続けていた。

「菅谷!」
ゆとり全共闘や法政大学の仲間たちだった。防波堤を掻い潜り、教職員に殴られながらも、必死に戦っていた。デモや逮捕や分派を共に経験した大事な仲間たちだった。


封鎖されたキャンパスで、巨大な暴力を前にして、僕は一人ではなかった。




僕はこの日のことを一生忘れないと思う。
抑えられて動けなくなっている僕の目と耳に、仲間たちの声と姿だけが届いた。


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Author:自由空間
先輩が作ったサークルが廃墟になってしまったので、かなり個人的に使っています。

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